画禅庵について



鐵心が絵筆をカナヅチに持ち替え、8年がかりで作り上げたアートと呼べる建築。


水墨画家の芸術と暮らしがギャラリーになって

 画禅庵の入り口に立つと、水墨画家・故佐々木鐵心の世界がある。門や板塀、建物、室内すべてが芸術表現になっている。

 まずは建材。木がふんだんに使われているのだが廃材や流木、節のあるものばかり。

「水墨画は白い紙に墨一色で描くもの。線の太い細い、描き方の強弱、墨の濃淡だけで質感や色合い、生命力など奥深いものを表現します。」

だから、きれいに製材されて磨き上げられた木には、魅力を感じない。

 例えば、展示室の床の間がそれを物語っている。節目の枝がゴツゴツと残る柱、虫に食われた木、ツル科の植物に巻きつかれた跡がくっきり残っているもの。建築材としては価値のない木が、生命力あふれる存在として語りかけてくる。そこに、木の一生と喜びや苦しみが見えてくる。水墨画と同様、心の底を揺り動かす力強さがある。

 いすやテーブル、調度品なども手作り。捨てられるものを遊び心でリサイクルしたアートの空間だ。そっと飾られた庭の草花やしつらえ、作品の展示には、自然と四季を感じてもらえる工夫を凝らしている。

 木の生命力に癒やされ、芸術を鑑賞し、お茶を飲んでくつろぐ。至福の空間がここにある。

 

 


古材・廃材を集めて3年

画禅庵は3階建て14部屋、延床面積約140坪ある。着工は‘89年。鐵心がスケッチを描き、基本図面はあるがほとんど用途は決まっていなかった。ただ水墨画で交流できる場所を作りたいと言う思いから始まった建築は、素材の面白さや個性に魅かれそれをどう生かすかということにこだわった。棟梁に廃材の良さが伝わらず全く工事が進まなかったこともあった。確かに棟梁が今まで手掛けた建築と比べたらゴミみたいな材料ばかり、いったい何ができるのか全く想像できなかったのもうなずける。数か月をかけ、時には喧嘩をしながら思いを語り説得。「冥土の土産に作ってやるか」とやっと腰を上げてくれた。

脳内出血で死の淵をのぞいて

画禅庵の建築前に脳内出血で半身不随になる所だった。その時「生きているうちにやりたいことをやろう」と決心し、リハビリもかねて棟梁と一緒になって少しずつ作り上げていった。この時なかなか利き腕がうまく動かず苦労したが、それによって水墨画の新しい描法を発見し、鐵心流と呼ばれる水墨画が生まれるきっかけとなっている。


住所

〒439-0018 静岡県 菊川市 本所2221-5

電話番号

TEL 0537 (35) 4559

FAX 0537 (35) 4559

メールアドレス

gazenan@gmail.com




入庵料

500円(喫茶・お菓子付)

営業時間

午前10:00〜午後4:00

(午後4時まで入庵可)

定休日

不定休(毎月限定開庵)

席数

喫茶席数最大 35名

駐車場

5台